大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和28(あ)443 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人上条文雄の上告趣意第一点について

原判決は第一審第九回公判期日において所論Aの尋問調書の証拠調の施行につい

て、被告人及び弁護人において異議を述べた形跡が窺われないから、右尋問調書中

伝聞供述記載部分をも証拠とすることに同意したものと認めることができるとして

いるけれども、被告人は第一審公判において密入国の事実を全面的に否認している

のであるから同公判調書の記載内容から考えて、被告人及び弁護人が前記尋問調書

の証拠調に異議を述べなかつた一事をもつて直ちに同調書中伝聞証拠の供述記載の

証拠能力までも認めるに同意したものと推断することはできない。しかしながら同

調書中から右伝聞証拠である供述記載の部分を除いた部分及び第一審判決挙示のそ

の他を綜合すれば同判決の判示事実を認めるに難くないから、第一審判決が本件尋

問調書の全般に亘つて罪証に供した違法があるけれども、判決に影響を及ぼすべき

法令の違反があつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認めら

れない。それ故論旨は採用できない。

同第二点について

事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三九六条により主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員一致の意見である。

裁判長裁判官霜山精一は退官につき本件合議に関与しない。

検察官 平出禾出席

昭和三〇年一月一四日

- 1 -

最高裁判所第二小法廷

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 谷 村 唯 一 郎

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!